最近のブンカ・ゴラク活動から(湘南セシリア副施設長・小林博)

魔笛.jpg×月×日
茅ヶ崎市民文化会館にて、プラハ国立歌劇場の引っ越し公演を観る。演目はモーツァルトの『魔笛』。プラハは5月に初めて訪れて、その魅力にすっかり取り憑かれてしまった街である。そのプラハから伝統の国立歌劇場がやってくるとあれば、行かないわけにはいかない。これまで、オペラには余り馴染みがなく、『魔笛』もCDで断片的に名場面だけは聴いているものの、生の舞台を観るのは初めてである。オペラは決して高尚なるゲイジュツなどではなく、ヨーロッパの庶民が楽しむ大衆芸能だということが、この楽しい舞台を観て感得できたのであった。

 

 

 

×月×日

風野春樹著『誰にも愛されなかった男 島田清次郎』を読む。島田清次郎の名は、今では歴史の藻屑と消え去っているが、大正末から昭和初期にかけて一世を風靡した流行作家である。1919年に新潮社から出版された自伝的小説『大地』は当時の文学青年たちを熱狂させ、50万部を超える大ベストセラーになった。しかし、その常軌を逸した傲岸不遜な言動により、文壇からも出版関係者からも忌み嫌われる存在になり、最後は精神病院に入院して、31歳で早世した。著者の風野春樹は精神科の医師で、この忘れられた作家・島田清次郎の数奇な生涯に関心をもち、地道な調査を重ねて詳細な評伝に仕上げた。過剰に愛を求めるがゆえに、誰にも愛されなかった、自称・天才作家の短い生涯に、やり切れぬ哀れと、切なく悲しい人の業を感じた。


宇宙論.jpg×月×日
藤沢市民オペラ公演、モーツァル『フィガロの結婚』を観る。今年はオペラづいているのだが、今回は87歳になる母を同行した。母はヨーロッパに旅行するのが夢だったのだが、歳を重ね飛行機の旅もままらなくなり、ヨーロッパ旅行は見果てぬ夢となってしまっている。せめて、ヨーロッパの雰囲気を味わってもらおうと、オペラ観劇を誘ったのだった。ことのほか喜んでくれて、少しは親孝行ができたかなと思う。

 

×月×日
風邪っぴきで土日を丸々寝込んで過ごした。寝床でたまたま『宇宙が始まる前には何があったか?』を読み始めたら、これがめっぽう面白い。それ以来、現代宇宙論のちょっとしたマイブームが到来。細かい理屈はちんぷんかんぷんながら、<暗黒物質>だの<暗黒エネルギー>だの<インフレーション理論>だのを面白がっている。現代宇宙論の解説書を5~6冊買い込んでしまった。この正月は宇宙論三昧で過ごすか。

 *年末になるので、次回の施設長日記のアップは1月7日になります。


 

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