Nとの再会 (湘南セシリア・みらい社 植村  裕)

先日、高校時代の仲間Nが開いているレストランに友人5人で集まった。30年程前に店を開業した当時に訪ねたのだが、目黒区の住宅街にあるカウンターとテーブル席が2席ほどの小さいレストランであった。30年ぶりで東急目黒線の西小山駅から歩いて向かい、道は変わっていないが、建物はすっかり変わってしまって、迷いそうになりながら、ようやくたどり着いた。数年前に建替えたそうで店内は広くなり落ち着いた雰囲気で、テーブルも増え、カウンターも長くなっていた。ちょうどランチタイムで店は常連らしき客で賑わっていた。カウンターの奥からすっかり白髪頭になったNが昔と変わらぬ人懐っこい笑顔で迎えてくれた。店は奥さんと二人で切盛りしていて忙しそうだ。調理にかかりきりのNには申し訳ないが、ワインで再会を祝した。下戸の私はウーロン茶で乾杯。

前菜、海鮮サラダ、自家製肉テリーヌ、人気メニューのふんわりしたカニクリームコロッケ、鳥のソテー、Wのリクエストのポークソテー黒胡椒焼き、パエリア等、次々並んだ。美味しい料理とワインで高校時代の思い出話に花が咲いた。

ワインのボトルの4本目が空く頃、ランチタイムが終わり一旦店を閉め、Nが加わり、二度目の乾杯。夜の仕込と営業があるので飲めないと言いつつ、杯を重ねていた。Nの料理に対するこだわりはインスタントものは使わない主義という。ソースをはじめスープストックなども丁寧につくるので、どうしても仕込には時間がかかるそうだ。還暦を過ぎてきついと感じることもあるが、手間暇をかけなければ美味しい料理はできない。だから客から美味しいと言われることが何よりうれしい、と話す。何と素晴らしい職人魂だ。こんなことを語るとは高校時代の彼からは想像もつかなかった。だから人生はおもしろいと思う。

楽しい時間はあっという間に過ぎ、これ以上Nの仕事の邪魔をしてはいけないとお開きにすることにした。今度は彼の休みの時にゆっくり会おうということになった。そして我々の合言葉「次に会うのが誰かの葬式なんていやだ。会えるときには会おうぜ!」を噛みしめながら、それぞれの帰路についた。

 

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